4回目 高齢者の「できる」という力を社会に役立てる

山崎さん

寺田先生は高齢者の一人暮らしを支えるためには何が大切と考えていますか。

寺田先生

高齢者の一人暮らしは今、いろいろな問題が言われていますが、一人暮らしができるっていうのはいい面もあるに違いないと思って、インタビュー調査しました。そしたら一人暮らしを支える3つの大切な「C」に気がづきました。1つは「繋がり=Connection」ですね。「親戚や家族が電話をくれるし、地域の繋がりがあるから一人暮らしができる」とある高齢者はおっしゃっていたんですね。

山崎さん

ConnectionのC。

寺田先生

次のCは「うまく処理する=Coping」。大変だけど、うまくやっていく対処法があるということ。健康についてもそうですが、障害を持っているから不健康だということにはならない。障害を持っていても、こうすればカバーできるというものがあれば日常生活は維持できます。

山崎さん

2つ目はCopingのC。

寺田先生

最後は、これが一番大事なんですけど、「できること=Capability」。「する」んじゃなくて「できる」ということ。やろうと思ったらできる。そういう思い。それを一人暮らしの高齢者の方たちはすごく持っていらした。僕たちは「してあげて」しまって、その能力を落としてしまっているということに気が付いたんです。もっともっとできる、だからもっともっとやろう、一緒に社会参加してやってもらおう、ということが、彼らの生きている尊厳や居場所につながる。高齢者が一緒に参加する社会を作る場合、その能力をどういう風に生かすのか、ということを僕たち自身が考えるのが大切なんです。最初は、「できない人」というか、「困っている人」という風に高齢者を見ていたんですが、そうじゃないということに僕たち自身が気付かされました。

山崎さん

いい話だなぁ。Capabilityで3つのC。病院に入院したりすると、本当はできるのに周りが全部やってくれる。そうすると、その能力は相当下がってしまうんでしょうね。医療について、「至れり尽せりやってくれる」というのは本当は良くないのかもしれない。できていたことまでやらなくなるから、どんどん筋肉が落ちてしまうし。これは介護や福祉の世界も同様で、ケアマネージャーがケアプランを作る時は高齢者のできることに着目して、そのできる部分を伸ばすために他のところをどうやってサポートしていくのか、という考えですね。

寺田先生

そうです。

山崎さん

地域も一緒です。先ほど寺田先生がおっしゃったように、ないものを探すのではなく、強みを探す。それを見つけて、「地域ではこれができる!」というところをどういう風に盛り上げていくのか。地域もCapabilityを高めていかなければならない。コミュニティデザインの仕事って、僕たちが地域に入って、街の人たちに対し至れり尽せりをやってしまうと、僕たちがいなくなったら何も動かなくなってしまう。地域の住民の方は自分たちでできることがいっぱいあります。そして魅力的な場所も知っている。それを出し合って組み合わせていくと、地域の中でできることってたくさんあるんです。

寺田先生

なるほど。

山崎さん

外から来たコンサルタントに「こんな風にやれば地域が元気になりますよ」と言われて、その通りに住民はやってみても上手くいかなくて、じゃあ、コンサルタントを変えてみようと。でもやっぱり上手くいかない。こんなことを日本中の地域がずっとやってきています。でも本当は、「地域に住む、あなたたちにできるんですよ」って誰かが言い出さなくてはならなかったんですね。地域の人たちが「私たちでやりましょうよ!」というのは恥ずかしいんだと思うんです。だから僕らのような部外者が入って、みなさんが持っているものをどう繋ぐと新しいことが生まれるのか、という話し合いの場を設けることはお手伝いできる。

寺田先生

studio-Lさんがコーディネートするということですね。

山崎さん

でも実行するのは地域の人たちです。全国に誇れる街に黒松内町を変えていくこと。その方がどこか魅力的に見える場所に引っ越すよりも早いですし、いい仲間ができるし、幸せになれるんじゃないかな、と思うんですね。青い鳥を追いかけて、誰かが何かをしてくれるだろうという、追いかける人生を歩むよりも、自分たちの力で街を魅力的に変える。自分一人じゃないから、あの人はこれが得意だし、この人は場所を貸してくれる、というのをどんどん生かして行って、チームを作って実行していく。これをなんとかお手伝いできないかなぁというのが、我々がやっている仕事ですね。だから、今のCapabilityというのはすごく重要な視点で、みなさん自身がそれをたくさん持っているわけですから、それを披露しないのはもったいないと思います。