3回目 全国から医師が集まる、地域医療が学べる診療所

山崎さん

地域医療の課題はなんでしょうか?

寺田先生

医療スタッフが、思いはあってもずっと仕事を続けられない点ですかね。都市部から田舎に勤務するとなると子供の教育の問題もある。地域に溶け込むのも難しい。医療関係者の家族も地元のコミュニティに入っていきづらくて、分断されてしまう。アメリカでは医療関係者とその家族の地域との関わり合いをすごく大事にしていて、コミュニティに入りやすいように工夫しています。

山崎さん

そうなんですね。

寺田先生

日本ではそれが課題ですね。医師住宅みたいなものを作ってしまうと、そこの中だけのコミュニティになってしまう。

山崎さん

黒松内町の場合はどうなんですか?

寺田先生

今はまだ、医師住宅にポンポンと入っているので、団地みたいなところに医師ばかりがいるという‥。

山崎さん

お医者さんばっかり!

寺田先生

だからあえて、あの医師は一区、この医師は二区など、地域を分散させて住居を構えるような仕組みを考えるといいかと思います。看護師さんも下宿するとかね。そういった街づくりが、これから新しく診察所や宿舎を考えるときには、1つのポイントになってくるのかなという気がしています。

山崎さん

健康な街を作っていこうと思ったら、市民・町民の場からできることっていうのは、医師や医師の家族がいやすくすることですね。「黒松内町にずっといたい!」と彼らが思うように、町民はうまいこと何かこう、野菜を届けるとか、蕎麦を打ったから蕎麦を届けるとか、「あんたら、分かってるやろな。ずっとここにおるんやで!」という感じで関係を育ててくれると、お医者さんたちも「ずっとこの町にいたい!」と思うかもしれない。残って欲しい医師や福祉関連の方に出会ったら、町ぐるみで繋ぎとめるというある種のズル賢さも市民や町民には必要かもしれないですね。

寺田先生

そうかもしれないですね。

山崎さん

北海道もそうですが、全国には医師が定着しない地域があって、募集しても来てくれない。市民や町民が役場に「どうにかしてくれよ。給料をもっとあげたらいいんじゃないか」というのとはちょっと違うかもしれないですよね。「給料が良かったからこの町に来ました」と言われても、黒松内町の人はあまりうれしくないですよね。この街をちゃんと愛してくれて、この街の人や生活をじっくり知った上で、「じゃあ、こういうことをしましょうか」とアドバイスをくれるような医師や福祉関係者がいてくれることの方が大事な気がします。そういう意味で、街づくりの側からできることは多いんじゃないかなという気がしますね。

寺田先生

もう1つは地域の病院や診察所が学校の役割になることですね。通常、地域医療となると、Dr

山崎さん

あれはテレビドラマの世界ですしね。

寺田先生

後が続かなくなっちゃうんです。一人の先生が頑張るんじゃなくて、そういう先生がどんどん入って、学んで次にいく。「ここで地域医療が学べるんだ」と考える。僕はそういう風にしていきたいんです。研修の浅い若い医師がここで地域医療を学んで経験を積み、また次へとステップアップしていく。そうすると地域医療が継続できる。医師だけじゃなく、看護師、社会福祉士も同様です。そういう医療者、福祉の教育の場として、黒松内町がある、と。地域医療で医療関係者が集まるところには、地域医療が実践できるから来たというよりは、地域医療が学べるから来たというところのほうが、維持できていますね。

山崎さん

地域医療分野の登竜門というか。

寺田先生

そうですね。

山崎さん

地域医療を医療者が学べる場所として、「一度は黒松内町で4年間過ごしてみるべき」と思われるような場所にしていく。今回は地域医療がテーマですが、それは起業や防犯・防災、環境問題でもいい。その分野でも黒松内町が学べる場所だということになっていくと、それは理想的だと思います。結果的に、町民が幸せに暮らせる街ができているということですから。